2022年卒業の坂井晴香さんと吉川芙美香さんの卒業論文の一部が『外国人・寮付き派遣労働者の地域生活を支える社会的インフラ―コミュティハブ概念の構築』(大阪市立大学都市研究プラザ2022:16-44)に掲載されましたので紹介します。
2人は地方都市や農村地域で働く技能実習生とその受け入れ企業の対応を中心に卒論研究を進め、「技能実習生と包摂的なホスト社会のありかた~企業におけるコミュニティハブ的な役割に注目して~」と題して第2章に収録されました。
坂井さんは技能実習生と事業所の関係が良好な三つの事例を調査し、また地域と行政が共同運営する日本語教室の調査も行いました。これらの調査を通して、技能実習生が日本での生活と仕事の実態を把握し、外国人労働者、特に技能実習生のような臨時労働者にとって受け入れ企業の果たす役割の重要性を指摘し、その上で技能実習生に対する包摂的なホスト社会のあり方について論じています。
吉川さんは、技能実習生の医療サービス利用に焦点を当て、技能実習生に聞き取り調査を通して、彼ら・彼女らの医療サービス利用の現状について考え、受け入れ企業のサポートの重要性を明らかにしました。今後、技能実習生にとって医療サービスを利用しやすくするための体制や取り組みについて論じています。
卒業論文の指導を担当された陸麗君先生より、これまでコミュニティハブの概念は主に市民社会と行政による「サポートプラットフォーム」の形成とその役割が注目されてきましたが、2人の卒論研究では企業のコミュニティハブ的な役割に着眼し、先進的な事例を通してその重要性を明らかにした点が評価に値する、と講評を頂きました。
この卒業論文は、在留外国人に対する日本の若者の意識と行動を明らかにするために、福岡県立大学人間社会学部公共社会学科1~4年生を対象にアンケートを実施し、また留学経験のある2名の学生に聞き取り調査を行い、研究結果をまとめたものです。
調査結果は「外国人との関わりの有無と意識に与える影響」、「公共社会学科での学びが意識に与える影響」、「外国人増加に対する考えと外国人に対するサポート」という3つの観点から分析しています。
「外国人との関わりの有無と意識に与える影響」から、留学生との交流や自身の海外滞在など外国人を身近に感じる機会が多くある学生の方が、在留外国人の受け入れに対して肯定的であることが明らかになりました。また「公共社会学科での学びが意識に与える影響」を見てみると、公共社会学科での学び、特に国際社会に関する講義が、若者の外国人に対する意識の形成に大きな影響を与えているということがわかりました。さらに「外国人増加に対する考えと外国人に対するサポート」を見てみると、外国人に対する公共社会学科の学生の意識が肯定的であることに加え、手助けをしたことがある人の割合が半数近くを占めており、この点は本学科で学んだ学生を大いに評価できました。
このような結果となった大きな要因として、福岡県立大学では留学生との交流や留学、国際社会に関する講義など、外国人とふれあう機会が多く、学生たちが国際社会について学んだり、考えたりする機会に恵まれている点にあると結論づけられました。
稲森 萌花 2023年卒業
福岡市を中心に「LGBTの方の住まい探しサポート」を展開している三好不動産が、LGBTに特化した住まいやライフプランに関する情報を発信するYouTubeチャンネル「MIYOSHI Rainbow TV」に出演しました。こちらのチャンネルでは、LGBTの方の「住まいやライフプラン」に関するさまざまな情報を発信しています。
卒業論文で「セクシュアルマイノリティカップルの住宅問題」をテーマにしていた私は、三好不動産の担当者の方にインタビュー調査を行いました。調査のなかで、LGBTの方が住宅を購入・賃貸契約するときに直面する問題が多くあること、その問題を解消するために三好不動産がLGBTの方のお部屋探しサポートをしていることを知りました。そして今回の卒論の調査をきっかけに、三好不動産の「MIYOSHI Rainbow TV」に出演させていただけることになり、賃貸契約や保健・相続の専門家のお話を伺ってきました。
【MIYOSHI Rainbow TV】
①同性カップルの生命保険・相続について
https://www.youtube.com/watch?v=KaE0N3J0Mno
②同性カップルのための公正証書について
https://www.youtube.com/watch?v=rZOJfZT5pTo
③同性カップルの不動産購入について
https://www.youtube.com/watch?v=MhGxtoUqgrA
④セクシュアルマイノリティの方の賃貸住宅について
https://www.youtube.com/watch?v=YFsN-kF8QKA
LGBTの方の住まい探しには、さまざまなハードルがあります。同性カップルで入居できる物件が少ないことや、保証人を頼める親族がいない(親族にLGBTであることを打ち明けていない)ことなど、まだ一般的に広く知られていないハードルが多くの場面で出てきます。こうした課題があるという現状とともに、ハードルがあるなかでも「今できること」がある、ということを発信していくことが重要だと考えました。YouTubeでの動画配信のほかにも、LGBTフレンドリーサイトを開設するなど、いろいろなかたちで情報を発信していますので、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。
Y・S 2023年卒業